その日、地球は滅亡した


「...自分の目で、確認してくるといいよ。」

門倉は静かに言った。

彼女はどうなったか知っているらしく、涙を拭いて拳を握りしめた。

「けど、私からのお願い聞いてくれる?」

「...何ですか?」


「あなた達は、生きて。

過去に振り返らないで前だけを向いていて。

もう、無茶な真似はやめてほしいの。

過去がどうであれ、あなたたち2人は無事に生きてるんだから。」


「「...。」」

「お願い。幸せになって。」

門倉は真剣な表情をしていた。

何も言えない2人は黙り込んで目の前の彼女を見ている事しかできない。

門倉は一度綺麗に微笑んでから、席をたった。

テーブルにお金を置いて背を向ける。

「じゃあ、私は帰るね。」

「え、門倉さ、」

呼び止める前に彼女は去って行ってしまった。

最後に見た笑顔が痛々しい。

残された2人は、無意識に互いの手を握り合った。










門倉は1人、慧と同棲していたマンションに向かって歩き出した。

もう何もかも遅いと感じて、止まったはずの涙が溢れ出る。

心にぽっかりと穴があいてしまったような感覚だった。

もう、慧はいないのだ。どこにいるのか、生きているのかもわからない。


彼は最初から、世界を救う気はなかったのかもしれない。

「ッ...。」

慧は愛する人を1人救えればそれでよかったのだ。
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