その日、地球は滅亡した
「...自分の目で、確認してくるといいよ。」
門倉は静かに言った。
彼女はどうなったか知っているらしく、涙を拭いて拳を握りしめた。
「けど、私からのお願い聞いてくれる?」
「...何ですか?」
「あなた達は、生きて。
過去に振り返らないで前だけを向いていて。
もう、無茶な真似はやめてほしいの。
過去がどうであれ、あなたたち2人は無事に生きてるんだから。」
「「...。」」
「お願い。幸せになって。」
門倉は真剣な表情をしていた。
何も言えない2人は黙り込んで目の前の彼女を見ている事しかできない。
門倉は一度綺麗に微笑んでから、席をたった。
テーブルにお金を置いて背を向ける。
「じゃあ、私は帰るね。」
「え、門倉さ、」
呼び止める前に彼女は去って行ってしまった。
最後に見た笑顔が痛々しい。
残された2人は、無意識に互いの手を握り合った。
*
門倉は1人、慧と同棲していたマンションに向かって歩き出した。
もう何もかも遅いと感じて、止まったはずの涙が溢れ出る。
心にぽっかりと穴があいてしまったような感覚だった。
もう、慧はいないのだ。どこにいるのか、生きているのかもわからない。
彼は最初から、世界を救う気はなかったのかもしれない。
「ッ...。」
慧は愛する人を1人救えればそれでよかったのだ。