その日、地球は滅亡した


慧は振り向き、こっちに向かってくる犬を見据える。

「慧っ!」

俺は思わず叫んだ。

あんなに多くの犬を相手に、無傷じゃすまない!

しかし、慧は俺の予想を裏切り襲い掛かってきた犬を蹴り飛ばした。

口を開けて、ぽかんと目の前の光景を見る。

ゴン、と壁に頭を強くぶつけた犬は クゥン と鳴いて意識を手放す。

「本当はこんな事したくないんだけど、俺、犬好きだし。」

今はそういう事を気にしている場合じゃないと思ったが、

俺は声が出せなかった。


「はは、俺が犬に負けるわけねぇっての。」

飛び掛かってくる野良犬を避けて蹴りを繰り出す慧を見ているしかできない。

「つえー...。」

この時俺は、慧がアニメや漫画の主人公に見えた。











「心晴、大丈夫か?」

たった一人で野良犬を全滅させた慧は振り返り俺を見る。

「う、うん...。慧、強いんだな。」

素直な感想を述べれば慧は笑った。

「まあな。この時の為に、7年前から鍛えたから。」

「え?七年前?」

「おう。」

ボキ、と手の関節を鳴らしてぐぐーっと背伸びをする彼を見た。

「慧って何歳?」

「何歳だと思う?」

「...20?」

「んー、じゃ、そんくらいでいいや。」

「は?」

すべてにおいて、慧は謎すぎる。

個人情報を明かしたくないのか知らないが、俺は素直に信用する事ができなかった。
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