その日、地球は滅亡した


空地に入り、未空はタイムマシーンの前で立ち止まった。


「心晴君、もうやめよう。」

「...え?」

「過去は、変わらないんだよ。」

「急に、何言ってるんだよ。」

心晴がそう言えば、未空は意を決し服をまくった。

心晴は慌てて視線を逸らす。

「心晴君。」

名前を呼ばれて、おそるおそる視線を向けると彼女の腹に痣のようなものが広がっている。

「なんだよそれ!!」

慧についていたものと同じ痣が、どうして未空に?

あの時慧は、俺達を病原体から庇ったはずだ。

だから彼は、不治の病にかかった。


「きっと、私達が過去を変えても、過去の私達が変わらない運命を辿ってるんじゃないかな?」

「ッ、なんだよ、それ。」

「もしそうだとすれば、慧さんはきっと助かるよ。

だって心晴君は感染してないんだから。」


心晴は彼女の腕を強く引いた。

そして抱きしめる。

彼女の肩に顔をうずくめて声を殺して泣いた。

過去を変えたくて、大切な人の死を受け入れたくなくて、

タイムスリップして、それで。


(俺は、何を変えられたんだろう)

否、何も変わっていなかったんだ。


「、俺は信じない。」


心晴はそう呟いた。

「...うん。」

「...何度でも、時を超えてやる。」

真剣な声を聞き、未空はこれ以上彼に何かを言っても無駄だと察した。

未空は心晴を止めようとはしなかった。

「わかった。」

そして静かに頷き、悲しそうに微笑む。

何かを決意したような表情で、心晴の手を取った。



「行こう、心晴君。」


3度目の、8月19日へ。





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