その日、地球は滅亡した
「...研究所が、無い。」
研究所があったはずの場所には何もなかった。あるのは隣接する位置にある会社のみ。
友哉は茫然として、何もない場所を見つめる。
「やはり、帰れない、のか。」
すとん、と友哉はその場に座り込んだ。慧も体力が限界なのか荒い呼吸を繰り返している。薄くなっていく体は止まらない。
過去が捻じれていく。それと同時に、未来も変わっていく。
「...なあ、...。」
友哉は峯岸に視線を向けた。
苦しそうに呼吸を繰り返す彼の名前を口にしようとしたが何故か名前が出てこない。
「...、ッ!?...何故だ、君の名前が、思い出せない。」
友哉は焦ったような表情で慧を見た。
そして気付く。
「そうか、君の存在が消えるから、君は世界に存在しなかったことになるのか...?」
その答えに小さく頷けば、友哉は静かに涙を流した。
そして何度目かわからない謝罪を口にする。
「すまないッ、」
慧の体が足元から消えていく。もう限界なのだろう。
謝らないで、という意味をこめて友哉の手に自分の手を重ねた時、自分の意識が遠のいた。(ああ、消えるんだ)
「ッ、待て!消えないでくれ!」
悲痛な叫びが辺りに響く。
「っ、... 。」
消える瞬間、慧は音のない声で何かを言った。
それを聞き友哉は目を見開く。絶望の中、一筋の光が見えた気がした。
彼は、消えたにも関わらずあきらめていなかったのだ。