その日、地球は滅亡した
時間が経つごとに何かを忘れていく気がした。とても重要なことだった気がする。「私達は、研究所で何を研究していたんだ?」友哉が問えば、研究員は考え込んだあと「わかりません。」と言う。
何とも不思議な現象だと思った。
「研究所内に何か手がかりがないか調べたのですが、何もありませんでした。」
「何もないだと?」
「はい。」
研究所内のものがすべてなくなっているらしい。友哉は立ち上がり、「ありえないだろう!私が確かめにいく!」と言い客室を出て行った。
何について研究していたか、何を求めていたのか、どうして2012年にはいるはずのない未来の未空がいるのか、どうして自分は未来の未空だと疑いなく受け入れているのか、理解できない事だらけだ。
未空が、研究員が持っていたパーツに視線を向けると、不思議なことにそれはうっすらと消えかけていた。
パーツがうすくなっていくにつれて、それがなんだったのかわからなくなる。
(私は、一体、)
なんのために、どうやって過去に来たの?
「未空さん。」
考え込んでいると、研究員が名前を呼んだ。顔をあげれば彼はス、と何かを差し出してくる。
「これ、未空さんのものですか?」
差し出されたのはプリクラだった。
ところどころ焦げて破れているものの、はっきりと自分がうつっていることはわかる。
そこには、自分と知らない2人がうつっていた。
「だれ?」
うっすらと感じたのは、愛しさだった。
けれどそれもすぐに消えてしまう。
心の穴が大きく広がった気がした。