その日、地球は滅亡した
客室に戻り、その場にいた社員に「君達が言っていたとおり研究所には何もなかったよ。」と残念そうに告げた。「しかし、誰かが事故にあったんじゃなくてよかったよ。研究していたことについての書類が消えたのは気がかりだが、表の仕事に影響がでるわけではない。今まで通り仕事を続けてくれ。」「はい。」友哉の言葉をぼうっと聞いていると、彼は未空の頭にポンと手を置いた。
「何が起きて未来の未空がここに来たのかわからないが、私の娘であることには変わりない。...家に来るか?」
「...いいの?」「当たり前だ。きっと妻も受け入れてくれるさ。」友哉の言葉に感動した。行くあてがなかったために、ほっとして息をはく。だんだんと、心にぽっかりあいた穴が気にならなくなってきていた。先程まで感じていた少しの寂しさや悲しさ、苦しさまでも消えてしまった。
自然と現状を受け入れ始めた未空は、「ありがとう、お父さん。」と言って笑った。
*
不自然なほどに、2012年の門倉家は快く未空を受け入れてくれた。今年で12歳になる未空は学校の友達の家に泊まりに行っているために居ないらしかった。
「あら、じゃああなたは未来の未空なの?」
母親は目を見開き、問う。
「うん。信じられないかもしれないけど、本当なの。」
「お母さんにはわかるわ。だってあなた、未空とそっくりだもの。」
テーブルに夕食を並べながら、母親は微笑む。
「未来に帰る方法がわかるまで、この家で過ごしていいからね。
もし帰れなくても、ずっとここに住んでいていいわ。ちょうどウチの未空が、お姉ちゃんが欲しいって言っていたから。」