その日、地球は滅亡した


陽人さんは初対面の私に親切にしてくれる。

腹は減ってないかと問われて、近くのカフェに入る。

適当なテーブル席に座り、向かい合うと不安げな表情をしていた

私に気づいたのか彼は 何にする? とメニューを見せてくれる。


「今日はおごってやるよ。」

「え、」

「遠慮すんな。」

「...有難うございます。」

何から何までお世話になりっぱなしで、申し訳ない気持ちになった。

適当に注文してから、陽人さんは水を一口飲んだ。



「門倉サンは未来人なんだし、

過去に何か大きな事件?災害?とかあったの覚えてねぇの?」


何気なく聞いたつもりの陽人さんだったけど、私は思わず動きを止めた。

ばっくん、ばっくんと心臓が騒ぎ始める。

「今日、何日でしたっけ?」

再確認のために、私は問いかける。


「8月19日だけど。」


「...っ、」

(まさか、)


どうして、思い出さなかったんだろう。

私が11歳のころに起きた、大災害を。

8月20日、世界は滅びる寸前にまで追い詰められたのだ。

多くのひとが死んだ、あの小惑星衝突事件は忘れられない。


今日は、2012年8月19日。

私の記憶が正しければあの大災害が起きる前日。





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