その日、地球は滅亡した
大通りに出て、先ほどよりも増えた人の波を避けながら前へと進む。
「心晴くっ、」
後ろを振り向けば、未空はうまく前に進めていなかった。
俺は彼女の元まで戻ると、手を引く。
未空の手は予想以上に熱かった。
空地に続く、薄暗い細い道に入ろうとしたときだった。
ぐい、と突然肩をひかれて振り向く。
「心晴?、と門倉サン。」
良く知る声に振り向けば、そこには不思議そうな表情をした兄貴が立っている。
「兄貴...。」
死んだはずの兄貴が目の前にいる。
「やっぱり心晴とそーいう仲だったんだなー。」
からかうような兄貴の声に未空は頬を赤らめて だから違いますって! と反論している。
けれど俺は、兄貴から目を離せない。
じわり、と瞳に涙が浮かんだ。
(兄貴が、生きてる)
今日は19日。過去なのだから生きているのは当たり前だ。
けれどどうしようもなく嬉しくなる。
「何泣きそうな顔してんだよ。」
兄貴は俺を見て笑う。
「な、泣きそうな顔なんてしてねーよ!」
感情を悟られないように強がってそう言い返せば、兄貴は俺の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「陽人さん...。」
(心晴君の雰囲気が、他のひとと違うってわかったのかな?)
未空は俺と兄貴を見比べて、悲しそうに笑った。
「俺、お前のこと護れるみたいでよかった。」
「え?」