その日、地球は滅亡した
「ハー、ハァー、」
荒い呼吸音が聞こえて、俺は震える手でリビングに落ちた屋根の残骸を
かき分けようとした。
「こ、はる。」
ビクン、
名前を呼ばれて、俺は身を硬直させる。
「兄貴、」
恐る恐る声の聞こえた方を見れば、真っ青な顔をした兄貴が屋根の下敷きになっていた。
ドクン!と心臓が大きく跳ねる。
「兄貴!!」
ダッ、と駆け寄ろうとした時、再び地面が揺れた。
____地震だ。
「にげろ。」
ああ、なんでこうなった。
さっきまで普通だったのに。
当たり前の日常だったのに。
全身が震えた。現状を理解する事ができない俺は、目を見開くしかない。
「はっ、やく、行け。」
「兄貴、かあさんっ...。」
ふと、兄貴の近くに視線を向ければ自分の母親の無残な姿がある。
喉の奥が詰まる感じがして、俺はその場に立ち尽くす。
「っ、救急車、」
俺は咄嗟にポケットから携帯を取り出し、119のボタンを押した。
___ただ今、大変込み合っております。暫く時間をおいてからおかけ直しください。
嘘だろ。一体、何が起きてるんだ。
「こ、は...る。」
生きろ、兄貴はそう続けて目を綴じた。
再び、先ほどとはくらべものにならないくらい大きな地震が起きた。
「っ!」
俺の目の前に、柱が倒れて落ちてくる。
逃げなきゃ、俺も、死ぬ。