その日、地球は滅亡した


「ハー、ハァー、」

荒い呼吸音が聞こえて、俺は震える手でリビングに落ちた屋根の残骸を

かき分けようとした。

「こ、はる。」

ビクン、

名前を呼ばれて、俺は身を硬直させる。


「兄貴、」

恐る恐る声の聞こえた方を見れば、真っ青な顔をした兄貴が屋根の下敷きになっていた。

ドクン!と心臓が大きく跳ねる。

「兄貴!!」

ダッ、と駆け寄ろうとした時、再び地面が揺れた。

____地震だ。


「にげろ。」


ああ、なんでこうなった。

さっきまで普通だったのに。

当たり前の日常だったのに。

全身が震えた。現状を理解する事ができない俺は、目を見開くしかない。


「はっ、やく、行け。」

「兄貴、かあさんっ...。」


ふと、兄貴の近くに視線を向ければ自分の母親の無残な姿がある。

喉の奥が詰まる感じがして、俺はその場に立ち尽くす。

「っ、救急車、」

俺は咄嗟にポケットから携帯を取り出し、119のボタンを押した。


___ただ今、大変込み合っております。暫く時間をおいてからおかけ直しください。


嘘だろ。一体、何が起きてるんだ。

「こ、は...る。」

生きろ、兄貴はそう続けて目を綴じた。

再び、先ほどとはくらべものにならないくらい大きな地震が起きた。

「っ!」

俺の目の前に、柱が倒れて落ちてくる。

逃げなきゃ、俺も、死ぬ。

< 6 / 187 >

この作品をシェア

pagetop