その日、地球は滅亡した



慧に続き、背を向けて走り出す。

再び流れ出る涙を乱暴に拭いて、足を速めた。



この時、兄貴が後ろで泣いていた事には気づかなかった。











「しばらくしたらもう一回空地に戻るか。」

慧はそう言った。俺は頷く。

すぐに戻れば、せっかくまいた動物がまた追いかけてくるかもしれない。

徐々に暗くなっていく景色。

赤とオレンジと、少しの青が入り混じった空を見上げて

俺は呟いた。

「...綺麗。」

今まで、綺麗なんて感じた事なかった。

空自体を、まじまじと見たことなんてなかった。

俺の隣で、慧は 今更かよ と言って笑う。

未空も俺につられて空を見上げた。



十数年生きて来たのに、俺は世界の事を何も知らない。

こんなに綺麗な空も、植物も、全部、気にしたことなんてなかった。

俺たちはまだ、生きている。

この空の下、地球という星で。


「慧、未空。」

俺は二人の名前を、真剣な表情をして呼んだ。


「俺、命賭けるよ。」


運命と、戦う。

大事な人達が生きるこの世界を、護ってみせる。







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