その日、地球は滅亡した
慧に続き、背を向けて走り出す。
再び流れ出る涙を乱暴に拭いて、足を速めた。
この時、兄貴が後ろで泣いていた事には気づかなかった。
*
「しばらくしたらもう一回空地に戻るか。」
慧はそう言った。俺は頷く。
すぐに戻れば、せっかくまいた動物がまた追いかけてくるかもしれない。
徐々に暗くなっていく景色。
赤とオレンジと、少しの青が入り混じった空を見上げて
俺は呟いた。
「...綺麗。」
今まで、綺麗なんて感じた事なかった。
空自体を、まじまじと見たことなんてなかった。
俺の隣で、慧は 今更かよ と言って笑う。
未空も俺につられて空を見上げた。
十数年生きて来たのに、俺は世界の事を何も知らない。
こんなに綺麗な空も、植物も、全部、気にしたことなんてなかった。
俺たちはまだ、生きている。
この空の下、地球という星で。
「慧、未空。」
俺は二人の名前を、真剣な表情をして呼んだ。
「俺、命賭けるよ。」
運命と、戦う。
大事な人達が生きるこの世界を、護ってみせる。