その日、地球は滅亡した






「心晴!」

目の前を走る心晴を呼び止めるが、彼は一瞬振り向いただけで足を止めようとはしなかった。

「話を聞けっ!」

「ッ、ついてくんな!」

どうして会社がある方へ来てしまったんだろう、と心晴は内心後悔した。後ろから追いかけてくる慧は早い。

運動神経が違いすぎる。

追いつかれるのも時間の問題だ、と悟った。

適当に右折すると、薄暗い道に入った。

さらに走ると行き止まりで、心晴はやっと立ち止まる。

「はぁ、はあ。」

乱れた息を整えていると、がし、と腕を掴まれた。

しかし心晴は振り向こうとしない。

「...心晴、」

「今更、何のようだよ。」

冷たく言い返すと、腕をつかむ手に力がこもる。

そのまま強引に引っ張られて振り向かされると、両肩を掴まれて

壁に押し付けられた。

嫌でも視界に慧が入る。


「...俺が、悪かった。」


慧の予想外の言葉に、心晴は思わず目を見開いた。

「...。」

止まったはずの涙がぽろぽろと再び流れ出す。

泣いてばかりだ、と思いながらも慧から視線を逸らせなかった。

「お前は1人じゃないよ。」

心晴の目を親指で拭いながら、慧は未空と同じ言葉を口にした。

胸がじんわりと温かくなる。


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