その日、地球は滅亡した
*
「心晴!」
目の前を走る心晴を呼び止めるが、彼は一瞬振り向いただけで足を止めようとはしなかった。
「話を聞けっ!」
「ッ、ついてくんな!」
どうして会社がある方へ来てしまったんだろう、と心晴は内心後悔した。後ろから追いかけてくる慧は早い。
運動神経が違いすぎる。
追いつかれるのも時間の問題だ、と悟った。
適当に右折すると、薄暗い道に入った。
さらに走ると行き止まりで、心晴はやっと立ち止まる。
「はぁ、はあ。」
乱れた息を整えていると、がし、と腕を掴まれた。
しかし心晴は振り向こうとしない。
「...心晴、」
「今更、何のようだよ。」
冷たく言い返すと、腕をつかむ手に力がこもる。
そのまま強引に引っ張られて振り向かされると、両肩を掴まれて
壁に押し付けられた。
嫌でも視界に慧が入る。
「...俺が、悪かった。」
慧の予想外の言葉に、心晴は思わず目を見開いた。
「...。」
止まったはずの涙がぽろぽろと再び流れ出す。
泣いてばかりだ、と思いながらも慧から視線を逸らせなかった。
「お前は1人じゃないよ。」
心晴の目を親指で拭いながら、慧は未空と同じ言葉を口にした。
胸がじんわりと温かくなる。