赤い下着の主

 しかし、チャイムはまだ鳴らない。

「ヤッたって、どういうこと?」

「付き合ってないのにってこと?」

 頷くと、二人はゴクリと喉を動かした。

「何だよそのオイシイ話は」

「オイシくねーし。おかげでため息三昧なんだっつーの」

 こんな思いをするくらいなら、手なんか出さなきゃ良かったとさえ思う。

 自分はそういうことを割り切れない男なのかと思うと、心底情けない。

 男失格。

「で、その女は何て言ってんの?」

「何も言わないんだよ。だからモヤモヤしてんの」

 二人は再びゴクリと喉を鳴らした。

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