赤い下着の主




 それはまだ穏やかな春の日差しが降り注いでいた頃のこと。

 とある私立高校の三年生になったばかりの梶原優(かじわらまさる)は、目の前の光景に思わず釘付けになっていた。

 部屋の向かいの、数年前に建ったマンション。

 その一室のベランダは、彼のベランダとちょうど向き合っている。

 そしてこの日そのベランダには、最近その部屋に越してきたと思われる女の赤い下着が堂々と吊るしてあった。

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