赤い下着の主

 お前に拒否権はないのだと突きつけられ、手も足も動かせない状態。

「別に、将来有望なお前や優秀な新人教師の未来を潰したいわけじゃないんだよ」

 高澤が言うことは、確かに教師としての指導かもしれない。

 ただ一人の教師としての警告。

 しかし一人の男としての取り引き。

 どうあがいても玉置にとってデメリットでしかない優は完全に意気消沈した。

「じゃあ、そういうことで」

 そう言って高澤は教室から出て行った。

 ピシャリと扉が閉まって、教室は再び静かになる。

 優はブレザーのポケットに手を突っ込み、いつでも玉置に返せるようにと持ち歩いていた鍵を握り締めた。

< 241 / 350 >

この作品をシェア

pagetop