赤い下着の主




 この日の放課後、優は電車を降りていつもの道を歩き出した。

 LEDの眩しい街灯をまっすぐ進み、向かったのは自宅ではなく玉置の住む部屋。

 ポケットに入れていた鍵を取り出しドアに差し込むと、軽い音を立てて難なく施錠は解除された。

「お邪魔します」

 とりあえず意味のない断りを入れ、誰もいない部屋に入り込む。

 部屋は相変わらず、ほんのりグレープフルーツの香りがした。

 部屋で待っててと言われたわけではないし、約束をしているわけでもない。

 不法侵入かもしれないが、これが安全で確実だと思った。

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