赤い下着の主

「梶原君」

 という呼びかけと共に体を揺すられ、優はやっと自らが眠ってしまっていたことに気付く。

「あ……先生」

 おかえり、という暇もなく、玉置がまくし立てる。

「ビックリしちゃったじゃない。来るなら来るって言ってよね」

「ごめん、先生。学校じゃ話もできなさそうだったから」

 体を起こすと、怒っている玉置に抱きつきたくなった。

 抱きつきながら、ごめんと謝りつつ甘えたくなった。

「だったらメールでも……って、そっか。携帯とか、知らないんだ」

 怒りがしゅんと治まると、急に現実を見た顔になる。

 携帯を知りたいなら、いくらでも教えてあげたのに。

 今はもう、それさえできない。

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