赤い下着の主

 美奈実は体を起こし、部屋着を羽織った。

 風呂のスイッチを入れて、湯を溜めている間にメイクを落とす。

 そのうち風呂が沸いたというアナウンスが流れ、気分の落ち着く香りの入浴剤を投入し、自らの身を湯に浸した。

『先生、可愛い』

 梶原のいたずらな笑顔を思い出すと自然に涙が溢れてくる。

 彼がはにかんで微笑む度にサラサラの黒髪をクシャクシャしながら抱きしめたくなっていたのを思い出す。

 思い出すと胸がキュンと痛み出す。


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