赤い下着の主



 美奈実が梶原に合鍵を手渡した日、高澤は案の定大人しくバーで待ってはいなかった。

 美奈実が部屋を出ると、マンションのフロントのところに立っていた。

「お店で待っていてくださればよかったのに」

「いいえ、女性一人で夜道を歩かせるわけにはいきませんから」

 念には念を入れておいて良かった。

 梶原を先に出していたら、確実に鉢合わせていた。

 バーに移動して、とりあえず軽く乾杯をして。

 てっきり告白の話をしてくるかと思っていたが、

「梶原優という生徒をご存知ですか?」

 彼は突然単刀直入にこう尋ねてきた。

 知っているも何も、先程まで一緒にいました。

 なんて言えるわけがない。

 しかし、何も知らないフリをするのは逆に不自然だ。


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