赤い下着の主

 すると高澤は酒を少しだけ口に入れて、

「そうです。彼です」

 と頷いた。

「何度か顔を合わせました。本屋さんとか、コンビニとかで」

「へえ、そうですか」

「あまり生徒にはプライベートな場面を見られたくないものですね」

「はは、恥ずかしいですもんね」

 梶原の話が出たのはこの時だけだった。

 妙に勘繰ってくることもなかったし、単純に梶原が近所に住んでいることに気付いて話題にしただけだと思っていた。

 甘かった。

 まさか、梶原の方に手が伸びるとは思ってもいなかった。

 何かに気付いたのであれば、話は自分の方に来ると思っていた。


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