赤い下着の主
「なー、優。卒業旅行どうする?」
原田がそんな話題を持ってきたのは、美奈実の個人指導を受けた2週間後だった。
「旅行? 俺、そんな金ねーよ」
弁当をつつきながら思うがままに答えた優は横で菓子パンを頬張る牧野に視線を馳せた。
「バイトすりゃいいじゃん」
「バイト~?」
「そう。俺たちこのまま大学に上がるだけだし、2月からは仮卒だし」
卒業とか仮卒とか、まだまだ先のことのように思っていたけれど、きっとあっという間に訪れる。
月日の流れというものは、学年が上がるごとに短くなってきた。