赤い下着の主

 好きな女は諦めなきゃいけないし。

 半ばキープしていた女には呆れられるし。

「嘘つけよ。優の分際でセフレがいるくせに」

 牧野は恨めしそうに呟く。

 セフレとか言うなよ。

 俺は真剣に好きなんだっつーの。

「なくなったから。そういうの」

「マジで?」

「マジだよ。もういいだろ。その話は」

 あれ以来、美奈実の顔も見ていない。

 週末に一度だけ窓から部屋を覗いてみたが、洗濯物が干してあるだけで姿は見えなかった。

 見覚えのある赤い下着を見ると、どうしようもなく切なくなった。

「で、どうしてなくなったわけ?」

 聞いてきたのは原田だ。

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