いつまでも


――心に、小さな音が生まれた気がした。―






学校をあとにした私は、地図を眺めていた。

「これって…、ルネの近くじゃん。」

地図の中の丸印の部分を、今目の前にある景色と交互に見る。


先生、8時って言ったよね…。今、まだ5時だし、ルネで時間潰そう。


私は、チリンチリンと可愛い音をたてる扉を開ける。
ふわっと、コーヒーの香りが私を包んだ。


「おぉ、晴ちゃん」
「おじさん、こんにちは」

高校生になってから、暇があればここに来ているため、すっかり常連になっていた。


「おじさん、8時に予定あるんだけど…それまでいていいかなあ?」

カウンターに座りながら、喫茶店のマスターであるおじさんに問う。

「客いないし、全然いいよ。ゆっくりしていきな」

にっこり、笑ってそう言ってくれた。

元々たれ目のおじさんは、笑うと目がなくなる。
それが好きで、とても落ち着く。

いつもの、カフェオレを頼んで8時まで時間を潰した。








_
< 21 / 26 >

この作品をシェア

pagetop