いつまでも
――心に、小さな音が生まれた気がした。―
学校をあとにした私は、地図を眺めていた。
「これって…、ルネの近くじゃん。」
地図の中の丸印の部分を、今目の前にある景色と交互に見る。
先生、8時って言ったよね…。今、まだ5時だし、ルネで時間潰そう。
私は、チリンチリンと可愛い音をたてる扉を開ける。
ふわっと、コーヒーの香りが私を包んだ。
「おぉ、晴ちゃん」
「おじさん、こんにちは」
高校生になってから、暇があればここに来ているため、すっかり常連になっていた。
「おじさん、8時に予定あるんだけど…それまでいていいかなあ?」
カウンターに座りながら、喫茶店のマスターであるおじさんに問う。
「客いないし、全然いいよ。ゆっくりしていきな」
にっこり、笑ってそう言ってくれた。
元々たれ目のおじさんは、笑うと目がなくなる。
それが好きで、とても落ち着く。
いつもの、カフェオレを頼んで8時まで時間を潰した。
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