いつまでも


歌って、こんなに感動するっけ……。


ただ、ただ、先生の歌声に聞き惚れていた。









どれくらい
時間が経っただろう。

辺りには、もう人はいなかった。

ただ、立ち尽くして聞いていたライブは終わってしまった。

先生も、私に気づいていない様子だった。


なんだか、その場を離れたくなくて。
ここにいたら、まだ歌声が流れてくる気がしたんだ。



「吉永」


ドキン…


呼ばれた方へと、振り返る。


「せん、せ…」

うまく、声が出ない。

緊張しているのか、手が震える。


「なにしてんの。」

私の前まで来て止まる。

「なに…って、歌…聞いて…た…」

目の前に、いる。

今まで、みんなの前であんなに素晴らしい歌を歌っていた人が。

「せんせ、が…歌ってた…さっき、せんせ…」

自分が何を言ってるか分からない。

あれ、あれ…。

心臓うるさい。


「ははっ、訳わかんね!」

ドキン……。

あれ、なにこれ。

なんでこんなに、ドキドキして…。


「来てくれてありがと」


にこっと笑ったその笑顔は、学校で見たのとは違う。

子供が楽しそうに遊んでいる時みたいな、そんな笑顔だった。





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