吸血鬼は蒼い月夜に踊る
「あれほどの手傷を負わせたのに、今もなおあんなものを生み落し続けている母体の位置をなんとしても掴まなければならないとは……骨の折れる仕事だな」


ディーノの呟きにレディ・クライムがまたガタガタと興奮するように震えた。

ディーノはレディの震える刃をそっと撫でる。

長い指先はまるで艶めかしい(なまめかしい)愛撫のようにその表面をなぞっていく。

それに呼応するようにレディは声を上げる。


「無念の死を遂げた、これが同士の叫びとはなんとも悲しいものよ」


ディーノはそう言って、ファルスを見た。

ファルスの顔は相変わらず仮面でも付けているかのように何一つ動じることなく、同じ表情のままだった。


「レディ・クライムは一族の牙であられますからね」


ファルスはじっとディーノを見つめ呟くように答えた。


「この血がそれほど欲しいのかねぇ、あれは。求めて奪って……その先になにがあるというのか、理解に苦しむがね。そんなに欲しいならくれてやってもいいがねぇ」

「ディーノ様ッ!!」


強い否定の力を宿した瞳にディーノは赤い唇を嬉しそうに綻ばせて見せた。


「相変わらず、冗談が通じない石頭だな」


クツクツと喉を鳴らして笑うディーノはそう言うと、先ほどとは打って変わって顔を赤らめて怒るファルスの顎にツイッと手を掛けた。

それから引き寄せるように艶々と輝く赤き唇に、ファルスの唇を重なるほど近くに引き寄せた。
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