吸血鬼は蒼い月夜に踊る
「人を捨てたか……なんとも愚かよ」


しかし、男はそれすらも喜んでいるかのように笑みを絶やさなかった。


「捨てたのではありませんよ。より高潔なる種に生まれ変わっただけのことです」


そう告げながら、ディーノの腕に絡みついた蔦を男は締め上げる。

ミシリ、ミシリと音を立てながら締め付ける蔦をしかし、ディーノは然して気に掛けることもなく、その男を見つめたまま、フンッと鼻先でせせら笑った。


「ゴミ……の間違いではないのか?」


ニヤリと余裕の笑みを浮かべて見せると、男は憮然とした表情を浮かべる。

『ゴミ』扱いをされたことが男のプライドを逆撫でしたようで、男の額に数本、血管が浮き出て見えた。


「ゴミかどうか、試してみたらいいでしょうッ!! お前たち、やってしまいなさいッ!!」


男の背中から伸びていた蔦がグッとディーノの腕を引っ張り上げた。

それと同時に、暗闇でもぞもぞとまごついていた異形のモノたちが一斉に這い出してきた。


チッ……


ディーノは小さく舌打ちすると、さっと身を屈ませ倒れた少女を抱えると、その少女の身体を宙へと放り投げた。
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