その男、危険人物にて要注意!!
でも、本当にやらかしたー。
今朝はちょっと忙しかったから、忘れちゃったのかな?
チラリ――― 隣の部屋に視線を移す。
松田さんの部屋を見るけど、松田さんは今日も朝からお仕事に行った。
だから、部屋に居ないのはわかっている。
こんなとこに座っていて、松田さんに会えたらいいな…… とは思うけど、そんな可能性はゼロに近い。
でも、願うくらいはいいよね?
“はぁー”と一際大きいため息を吐いたら…… 突然、手の中でケータイが震えた。
「明日香だ」
【今日は久しぶりに紗雪に会えて楽しかったよ。
いつか、紗雪の彼氏の松田さんに会わせてね】
「ふふふ、明日香らしいなー。 もう……」
明日香からのメールで頬が緩んだ。
それから…… どれくらいの時間が経ったのだろう。
1時間は経ってない。
カツン、カツン―――。
誰かが階段をのぼってくる音がする。
このアパートで、ご近所さんといっても挨拶をたまにする程度で立ち話などしたことがない。
唯一、あたしに絡んでくれたのが松田さんだけだった。
今、階段を上がってくる人がどんな人でも、部屋に入れないあたしを見たら不審に思うに違いない。
一歩ずつ、足音が大きくなる―――。