その男、危険人物にて要注意!!
松田さんとキッチン
居心地が悪い……。
そんなあたしの気持ちを察したのか。
「紗雪ちゃん、そろそろ帰ろうか?」
「…… はい」
松田さんが差し出す手を握り、あたしは立ち上がった。
「店長、お先に失礼します」
「おー、気をつけて帰れよー」
繋がった手はそのままで、あたしたちは裏口から出る。
「どこか行きたいとこある?」
「特にないです」
「じゃあ、一緒にご飯でもどう? 美春先輩は今日は遅い?」
「はい、遅いみたいです」
「じゃあ一緒に食べよう」
「…… はい」
松田さんはあたしがコーヒーが苦手って黙っていたのに、いつもと変わらないように接してくれる。
本当は何か言いたいのかもしれない。
でも、それを聞いてこない松田さんは…… 今、何を考えているのかわからない。
「なにか食べたいものはある?」
食べたいもの……。
本当はあたしが松田さん隠していたことを謝らないといけないってわかっている。
わかっているから……。
「松田さんの手料理が食べたい……」