その男、危険人物にて要注意!!
甘さ 120パーセント
ケーキを持って、立ち上がる。
「お隣りさん、行ってくるから」
「いってらっしゃーい」
陽気なお姉ちゃんの声に見送られ、あたしは松田さんのドアの前に立つ。
…… 立ったまではよかった。
よかったのだが。
「チャイムなんて押せないよーっっ」
松田さんと何度か話したことがあるといっても、こういったことをするのは当然、初めてでだし。
なんて話しかけたらいいのかわからない。
グルグル頭で考えていると……。
「紗雪?」
「…… お姉ちゃん」
自分でも驚くくらい弱気な声でお姉ちゃんを呼んだ。
いつまでたっても戻らないあたしを心配したお姉ちゃんが顔をひょっこり覗かせた。
「なーにしているの」
「チャイムを押そうとすると緊張して……」
「緊張って……」
クスクス笑ったと思ったら…… それは一瞬だった。
「はい、押してあげる」
横から伸びてくる指は、迷いなく松田さんの部屋のチャイムを鳴らした―――。