ここにある
昼過ぎ、玄関のチャイムをやかましく連打し、原田がやってきた。


「北城高校の原田と申します。今日は陶子さんと話がしたくてやって来ました」


見ずともわかる原田のやる気満々な熱気が、玄関から一番遠い、この部屋まで伝わってくる。


母に通され「失礼します!」と体育会系の威勢のいい挨拶をし、原田の気配がドアのすぐ近くまできた。


「佐倉さん、聞こえてますか?あ、返事はいりません。聞こえてると信じて、このまま話ますね」


扉の前から、どこかマニュアルぶった原田の声が聞こえる。

あたしは「はい」と言う返事の代わりにため息が出た。
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