ここにある
ほとんど無意識に近かった。

気がつけば、あたしはドアを蹴り上げ、部屋を飛び出していた。

「きゃっ」と悲鳴をあげた原田に嫌悪の視線をくれてやる。


玄関でスニーカーに足を突っ込み、ドアを開けた。


一瞬、振り向けば、うつむいた母が見えた。

あたしを止める気はないようだ。

あたしは数秒間だけ母を見つめた。

これが、あたしと母の最後の別れの挨拶だ。

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