ここにある
……おいで

……早く、こちへ

……おいで


その場所があたしを呼んでいる。

早く、行かなくちゃ

あたしは、ふらふらと歩きながら河原へ向かった。

もちろん、あたしが行くべき場所は、川ではない。

河原へ行くのは詩音との約束を守るため。

今のあたしを、支えているのは詩音の存在だけだ。

詩音が踏み出そうとしている何かに、少しでもかかわれている気がするから


あたしにも、まだここにいる価値があるかなと、つい図々しい想像をしてしまう。

あたしは、今までの詩音の面影をたどりながら、河原へ急いだ。
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