ここにある
「陶子?」

不意に声をかけられ、振り向くと少し驚いたような詩音がいた。

「あれ、まだ、夕方じゃないよ」

詩音は夕暮れにはまだ早い薄い青空を見た。

あたしには家での出来事を、詩音に打ち明ける勇気はない。

「早く来たかったから」

そう言うと

詩音は「同じだ」と言って、いつもの柔らかい笑顔をくれた。


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