ここにある
コスモスは誰の手を借りることもなく、太陽と雨水の恵みをうけ

美しく咲きほこっていた。

詩音は無言のまま、コスモスに吸い寄せられるように近づき、しゃがみ込んだ。

コスモスに唇が触れるほど近づき、何度も花の中をのぞいている。


黄緑色の繊細な葉をなでたり、花びらの裏側をつついたり

となりに座り込んだあたしに、まるで気づかず、コスモスの観察を続ける。


詩音の横顔にゆるやかに赤みがさしこみ、夕焼けが迫っていることに気がついた。


「わかった」
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