ここにある
「陶子も、おいで!」

波打ちぎわで詩音が、あたしに手を差し出す。


あたしは意図がつかめず、首を傾げた。

「オレも一緒に海になる」


え……?

詩音が何を言っているのか、理解できず、あたしは傾げた首をさらにひねった。

詩音は、早くおいでと小さな子供を迎えるように両手を広げ

おだやかなな微笑みをあたしへ、そそぐ。

なんで?どうして?

浮かび上がる疑問を少しも解決できないまま、あたしは吸い寄せられるように、詩音の胸に飛び込んだ。

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