ここにある
口の中は、塩辛いしぶきで、むせるように苦しい。

さらに沖の方から、けたたましい音がとどろき、波が大きくなる。

「詩音!」

叫べば、心配ないというように、しっかりと両腕でつつまれる。

ぐらりと何度も平衡感覚がなくなるたびに、詩音はあたしを引き寄せた。


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