ここにある
波打ちぎわより、だいぶ離れた砂地に、どっと倒れ込む。


海水を存分に吸い上げた衣服が重くて、体が動かない。


あたしと詩音は、横たわったまま、荒い呼吸をしばらく繰り返した。

呼吸のたび、痛いほどの鼓動が鳴り響く。


生きている!

「陶子…?生きてる?」

「うん…」

詩音の声が耳に暖かい。

あたしは閉じていた目を開き、よいしょと重い体を起こした。

すでに起き上がっている詩音を見れば

長い前髪から、したたる水滴をそのままに、心配そうにこちらを見つめている。
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