ここにある
目を閉じたまま、暗闇で感じた人の気配に、あたしは驚いて 目を開いた。


辺りは夕日が少し、影を濃くしていた。


川は夕焼けを吸い込みゆったりと流れている。

整然と立ち並ぶ、市営団地の側面が川面にゆれている。


何も変わらない。

あたしは苦い息を吐いて、やはり、市営団地に帰るしかないのだと、向きを変えた。


その時、一人の少年が視界にあらわれた。

あたしの心臓は、どくん、と波打った。
< 24 / 281 >

この作品をシェア

pagetop