ここにある
少年はジーンズにTシャツとう、いたってシンプルな格好をしている。


でも、制服を着ていて当たり前のこの時間には、とても不自然な装いに感じた。


少年は土手沿いのガードレールに両手をつき、川の向こうを黙って見つめている。


周囲の慌ただしさを全て飲み込んでしまいそうな、物静かで深い瞳。


緋色に染まった横顔に、形のよい鼻りょうと、影を落とす長いまつげ。


何か言いたげに、つんとした唇が赤く色づいている。


まるで美しい絵でも見ているようで、あたしはくぎづけになった。


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