ここにある
「ありがとう」

母の声に、目の前が真っ白になった。

「陶子と帰ってきてくれて、ありがとう…」

全身からふわふわと力が抜けていく。

脳みそまで抜けたように、頭もからっぽで何も考えられない。

何を、どうすることもできず、ただ呆然と立ち尽くしていると

母があたしを引き寄せ、ふわりと抱きしめた。

< 257 / 281 >

この作品をシェア

pagetop