ここにある
「お母さん」

呼びたくても、ずっと呼べなかった。

近寄りたくても、近寄れなかった。

あたたかい。

もう二度と手に入らない温もりだと思っていた。


お母さん…

今、呼べば呼ぶほど応えてくれる、その温もりを

全部ほしくて、あたしは母を呼び続けた。

「陶子、ごめんね」

ふと、耳元でささやかれた、母の言葉に

あたしは目を見開いた。

なんで…?

その疑問を口に出せず、母の顔を見ると
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