ここにある
「陶子のこと、世界で一番、知ってる人間になりたいんだ」


詩音の言葉が全身をかけめぐる。

互いに押し当てた額と息がかかるくらいのこの距離が、最高に心地好い。


「ありがとう」

あたしが詩音をぎゅっと抱きしめると

一瞬、驚いたよいに詩音は額を離し

そのあと、いつもと同じ、優しい力加減で、あたしを包み込んだ。


少し…

また、少し

前にすすんでいけば


ひとつ…

また、ひとつと増えていく物がある。

< 280 / 281 >

この作品をシェア

pagetop