ここにある
彼の気を引きたいがために、思わず出た言葉だった。


雨の音や、風の音がわかると言った彼の言葉を、無断で使ってしまった。


彼だけに許された特別な言葉

それを、あたしが思いつきで使ったって…


彼に届くはずがない。


自分の器に盛りきれない言葉なんて…

死んだも同然なのだ。

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