ここにある
「あ、あの…!」

気がつくと、あたしはすでに数歩遠のいた彼の腕をつかみ、引き止めていた。


「な、名前、なんていうの?」

ほとんど勢いで聞いたあたしに、彼は少し考えてから答えた。

「シオン」

「しおん?」

聞き直したあたしに、かばんの中から小さな手帳を取り出す。


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