憧れの彼と恋する方法

「何が大切だと思う?」


けど、今の私にはなんとなく分かる気がするんだ。


「その人に合うヘアメイクを心がける事は当たり前だと思うけど、それ以外にも何を望んでいるのか、どんな事を感じているのか、相手の気持ちを知る…っていう事ですかね」


私の言葉に、桜井さんはニコッと笑みを浮かべた。


「そうね。大切なのは気持ちよ」


『違うわ!』なんて言われたらどうしようかと内心不安だった私は、ホッと胸を撫で下ろす。


「あなたが言ったみたいに、ヘアメイクをする相手の立場になって考える事と、メイクする側、つまり私達自身の気持ちも大事なの」


「え?私達?」


「そうよ。プライベートを仕事に持ち込むな!なんて言葉があるけど、まさにその通り。
自分の気持ちが乱れていたり、不安定だったらいい仕事なんて出来ないんだから」


桜井さんの言葉が、ずっしりと私の胸に響いた。


「沈んでいる時は、自分でも気付かないうちに暗い色を選んだりしてしまうものなの」

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