憧れの彼と恋する方法
現場に着いた私はまず色んな人と話をしようと思い、すれ違う全ての人と挨拶を交わした。
「おはようございます!宜しくお願いします!」
昨日此処に来たときは、とにかく何がなんだか分からなくて全然周りを見る事が出来なかったけど、こうして改めて見ると自分がとてつもない場所に立っているんだと実感できた。
こんなに沢山の俳優さん達に囲まれて、本当だったらサインや写真をお願いしたい所だけど、これは遊びじゃない。
とにかく今迄自分がやってきた事をフルに活用し、ヘアメイクという仕事に集中した。
時々すれ違う竜司君にドキドキしながらも、なるべく視界に入らないように顔を背けたりして。
だって、いくら頑張るって決意したとはいえ、竜司君を目の前にしたら冷静でいられる自信が全くないから。
「なんか由希頑張ってるね」
メイクをしながら鏡越しに私を見つめて、舞美がそう言った。
「うん。私頑張るって決めたんだ」
「…?」
此処が願いを叶える為に与えられた新しい世界だから頑張るなんて事は決して誰にも言えない、これは私にしか分からない夢のような現実なんだ。