眠り姫はひだまりで


毎日、毎日。

お父さんの書斎に行ってお昼寝する。


お母さんに『お仕事の邪魔しちゃだめよ』って言われても、懲りずに書斎のドアを開ける。

どんなにお仕事が大変なときでも、お父さんは笑顔で迎えてくれる。


「…………そっかー………大好きだったんだね。お父さんのこと」


驚いて純くんを見ると、純くんは笑った。

「今の色葉見たらわかるよ。すげー幸せそうな顔してる」


はは、と優しく笑う。

幸せそうな…………

うん。幸せだったの。

あのときは…………。


「だけど、お父さんが亡くなってから、書斎に行っても、寝れないの」


どんなに書斎に陽が射してても。

それでも、お父さんのいない部屋の中は寒くて。

とても、寒くて………


「だからね、高校でお兄ちゃんに、空き教室のこと教えてもらった時は、すごく嬉しかったんだ」


あの場所は、あったかい。

まるで、お父さんのいる書斎みたいに。


「…………でも…………」


やっぱり。






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