眠り姫はひだまりで



お父さんのそばが……いちばん、あったかい。


「………………っ」


目が、潤んでくる。

あぁもう。

せっかく涙引いてたのに。

なにも言えなくなった私に、純くんは静かに言った。

「…………な、色葉」

私はなにも言わない。

ただ、鼻をすするだけ。

けれど、純くんは構わず話し続ける。


「兄ちゃんに、言われたんだけどな?色葉は、泣き虫なとこがあるけど、いちばん泣きたいとこでは、泣かないとこがあるって」


…………なに、それぇ?


「堪えて、なんでもないような顔してるって。………だから、そのへん色々よろしくって」


………………ばかお兄ちゃん。

なんなのぉー?

泣いちゃうじゃん。

うずくまる私を見て、純くんは言う。


「…………あとな、これは俺から………」


私に近づいて。

低く、優しい声で。


けど、いつもの純くんの明るい声色じゃなくて。


「…………泣きたいの、堪えなくていいよ」



私を見下ろして言った。





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