眠り姫はひだまりで


「帰っちゃった」

お母さんは、さも残念そうに言った。

「帰った?いつ!?」

「昨日の夜に」

「え………!?昨日?」


じゃあ、私が寝たあと、すぐ帰っちゃったってこと?

「礼儀正しく帰ってったわよぉ。水野くんが帰った後、あんたの部屋に行ったら、あんたベッドにぐっすり寝ててねぇ。一体昨日の夜なにがあったの?」

ニヤニヤしたお母さんが訊いてくる。


…………純くんが帰った後、私ベッドに寝てたってことは…

純くんが腕の中で寝た私を、ベッドまで運んでくれたんだ。

や、優しい〜…………

あ、でも私、昨日のお礼さえ言ってない。

今日は日曜日だから、今日中に、お礼言えないなぁ。

明日、言えるかなぁ?

空き教室で会えれば………

そう考えながら、何気なく動かした視線の先のもの。


「あーーーーーーーーーー!!」


思わず、叫んでしまった。

「うるせぇよ姉ちゃん!なんでこっち向いて叫ぶんだよ!」


視線の先のもの。それは………

優馬が手にしている、電話の子機。

そうだ………


「その手があったんだ………!」

「無視かよ!おい姉ちゃん!」




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