眠り姫はひだまりで


「………色葉」

優しい声で。

呼んでくれるから、私は純くんに名前を呼ばれる、その瞬間が好き。


「…………頭上げろ」


珍しい命令口調。

でも、顔はあげられない。


「…………いいの?」

純くんの、落ち着いた声。

え………何が?


「俺が今考えてんのはー、色葉がこのまま顔上げなかったらぁー」


………上げなかったら?



「無理やり顔上げさせてキス」


ばっ!!

素早く顔上げた。


見えたのは、いつもの明るい笑顔の純くん。

「………しよーって思ってたんだけどな~…………。あーぁ。顔上げちゃった、色葉」


………な、なにそれぇ~………

まぁ、冗談だったんだろうけどぉ。

私はめちゃくちゃドキッてしたんだから…………。

「…………か、からかわないで」

「ゴメン。だって、こっち見ないからさぁ?なんであんなキョドってたの」


「………な、なんでもないよ」

とても、貴方が王子様に見えて、ドキドキして顔見れなかったんです、なんて言えない。


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