眠り姫はひだまりで
あの、瞬間
「あーっと…まず何から話したらいいのかな」
久しぶりの大和との帰り道。
中学の卒業式では、もうこうやって一緒に帰れることなんてないだろうと思っていた。
「…………いっぱい、訊きたいことありすぎて………」
何から話してもらおうかな、と笑うと、大和も笑い返してくれた。
「じゃあ……まずうちの家庭事情から」
「家庭事情?」
「うん。転校も、この学校にしたのも、すべてはそこからだから」
前を向いている大和の表情は、なんだか切なそうな、苦しそうな感じだった。
夕日が私達の歩いてきた道を暗くする。
影が後ろに伸びていた。
大和の家庭のこと………。
「………………大和のご両親が離婚して、大和の苗字が変わったことは覚えてるよ」
中学三年の夏のことだった。
夏休み、私と大和は時々二人でお互いの家に集まったりして、勉強したりしていた。
その日も私の家で勉強する約束で、家で大和が来るのを待っていた。